グルコサミンの変形性膝関節症改善効果はゼロ?

グルコサミン市場の盛り上がり

グルコサミンという健康成分をご存知ですか? 関節の軟骨を強化するサプリメントとして人気の成分ですが、医療業界は以前から、グルコサミンに変形性膝関節症を改善する作用はないと、否定的な立場をとってきました。
「グルコサミンは体内に吸収されない。吸収されたとしても関節に届かない」……反対意見をまとめるとこんな感じでしょうか。

多くのドクターと同じ様に私もそう思っていましたが、2001年に状況が変わります。

世界の5大医学雑誌の1つ『The Lancet』に「グルコサミンは変形性膝関節症を改善するし、予防にも役立つ」という論文が掲載されたのです。
そして、その年を境に「グルコサミンは有効か無効か」という論争が業界内で一層激しくなりました。

また、医学雑誌で効果が証明されたため、食品(サプリメント)としてではなく薬として販売できるようになり、製薬、飲料メーカーのグルコサミン市場も盛り上がりました。
その一方で「企業から資金援助をされている論文だから、過剰な効果が示されている」という批判的な意見もあり、効果の有無についての議論は今も続いています。

 

 

グルコサミン効果の実際のところ

2014年現在。様々な論文を読んだ私の印象としては「グルコサミンを数年間飲み続けた場合には効果が出て、短い期間(半年程度)飲んだだけでは効果が出ない」という内容が多いと感じています。

また、私の個人的な見解ではグルコサミンを飲むだけで効果が出るとは思えません。
グルコサミンを飲みつつ、運動をして初めて効果が出ると思っています。

人の体は使い方に合わせて作られていきます。筋肉に負荷をかければ、その負荷に負けないように筋肉量が増えますし、腱を伸び縮みさせれば、弾力のある腱になります。
関節軟骨の表面に適度な摩擦を加えることによって、キレイな軟骨の層ができたります。

これらのことをふまえれば、「グルコサミンという組織を構成する材料を取り入れたあと、体に正しく負荷をかけて目的の組織を作っていく」という考え方が正解だと思います。

関節に痛みを抱える方は、自分が有用だと思える成分を摂取しつつ、適度運動や歩行を取り入れてくださいね。

 

 


執筆 寺尾 友宏/Tomohiro Terao
お茶の水セルクリニック 院長

職務と平行して学んでいた京都大学院の医学研究科では、幹細胞研究に参加するなど、再生医療のような新治療の開拓に強い興味を抱く。
また、現場ではスポーツ整形外科医として医療に従事。杖道を行っていたこともあり、武道を始め、テニスやゴルフ、野球、サッカーなどの様々なプロアスリートを診療してきた実績を持つ。
このような背景から、ミクロ(細胞)とマクロ(動き)の総合的な回復を信条として治療にあたる中、特にPRP治療の症例は600例を超える。
http://www.joint-function.com/

資格
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科 スポーツ医
日本整形外科学会 運動器リハビリテーション医
日本医師会 健康スポーツ医
日本医師会 産業医
日本体育協会 スポーツドクター

著書
『万能細胞医療—衝撃の未来医学』メタモル出版(2010年)
『「正しいクセ」を身につければ腰痛は治る!』洋泉社(2012年)

【参考論文】
・Setniker, I. et al : Absorption, distribution and excretion of radioactivity after a single intravenous or administration of [14C]glucosamine to rats. Pharmatherapeutica 1984; 3: 538-550
・Setniker, I. et al: Pharmacokinetics of glucosamine in the dog and in man. Azneimittelforschung 1986; 36: 729-735
・Setniker, I. et al : Pharmacokinetics of glucosamine in man. Azneimittelforschung 1993; 43: 10: 1109-1113
・Reginster ,JY. et al:Long-term effects of glucosamine sulphate on osteoarthritis progression: a randomized, pacebo-controlle clinical trial. The Lancet 2001; Vol.357 251-256 
・Kwoh, CK. et al:  Glicosamine failed to prevent deterioration of knee cartilage, decrease pain. Arthritis & Rheumatology, 2014; 66:930-939 2014